社会福祉士国家試験の受験者が少なくなった理由を考えてみた

資格

2025.02.16

2025年2月2日に実施された第37回社会福祉士国家試験では、受験申込者数が31,186人となり、前年より3,353人減少しました。これは過去20年で最少の受験者数となっています。

今回、何故受験者が少なくなったのかを理由や減少したことにより今後どのような展開になっていくのかを考察してみました。

受験者数減少の背景

受験者数の減少には、以下の要因が考えられます。

1. 労働環境や待遇の問題

福祉・介護業界は、人手不足による長時間労働や給与の低さが指摘されており、仕事のハードさに対して待遇が見合わないと感じる人が多いです。結果として、福祉業界を目指す人が減少し、資格取得を目指す人も少なくなっている可能性があります。

2. 資格取得のハードルの高さ

社会福祉士の資格を取得するには、大学や専門学校で福祉に関するカリキュラムを履修し、国家試験に合格する必要があります。特に、試験は広範囲の知識を求められるため、勉強量が多く、難易度が高いと感じる人も少なくありません。この負担の大きさが、受験をためらわせる要因になっている可能性があります。

3. 少子化の影響

福祉分野を志す学生自体が減少していることも影響しています。少子化により若年層の人口が減る中、福祉を学ぶ学生数が減り、それに伴い社会福祉士の受験者も減っていると考えられます。

4. 他の資格との競争

福祉分野では、介護福祉士や精神保健福祉士など、社会福祉士以外の資格もあり、キャリアの選択肢が広がっています。そのため、社会福祉士ではなく、別の資格を目指す人が増えている可能性があります。

5. コロナ禍の影響

新型コロナウイルスの影響で、福祉施設や医療機関の厳しい現場状況が報道され、福祉業界に対するネガティブなイメージが広まったことも、志願者減少の一因かもしれません。

受験者数の減少は、将来的な社会福祉士の人材不足を招く可能性があり、福祉サービスの質の維持に影響を及ぼす懸念があります。そのため、福祉業界の労働環境や待遇の改善、資格取得支援の充実、福祉の重要性や魅力を若年層に伝える取り組みが求められています。

一方で、昨年度の合格率は過去最高の58.1%を記録し、合格者数も初めて2万人を超えました。 joint-kaigo.com

この傾向が続けば、資格取得者の増加が期待されますが、受験者数の減少が続く場合、長期的な人材確保の課題は依然として残ります。

一方で社会福祉士の受験者が減少している現状は、逆に「チャンス」と捉えることもできます。以下のような視点で考えると、社会福祉士を目指す人にとって有利な点が見えてきます

1. 需要が高まり、就職・転職しやすくなる

受験者が減る＝資格取得者が減るため、今後、社会福祉士の資格を持っている人の価値がさらに高まる可能性があります。特に、高齢化が進む日本では、福祉サービスの需要は今後も増え続けるため、社会福祉士の活躍の場が広がります。

2. 待遇改善の可能性が高まる

人手不足が深刻になれば、業界全体として待遇改善を進める必要が出てきます。すでに処遇改善の動きは始まっており、給与アップや働きやすい環境づくりが進むことで、社会福祉士の仕事がより魅力的なものになっていく可能性があります。

3. 独立・起業のチャンスも増える

社会福祉士は、施設や病院で働くだけでなく、相談支援や福祉事業の運営など、自分でサービスを提供する道もあります。今後、社会福祉士が不足すると、地域での福祉支援を求める声が高まり、独立・起業のチャンスが広がるかもしれません。

4. 資格取得のサポートが充実する可能性

受験者数が減ることで、福祉業界や教育機関が社会福祉士の資格取得を支援する制度を強化する可能性があります。例えば、奨学金や研修制度の充実、試験の負担軽減など、資格取得のハードルが下がる方向に進むかもしれません。

5. キャリアアップがしやすくなる

社会福祉士の資格を持っている人が減れば、資格を持つ人材は貴重な存在になります。その結果、管理職や専門職へのキャリアアップがしやすくなり、将来的により良いポジションや待遇を得られる可能性があります。

まとめ

福祉業界全体での取り組みが重要となる中、社会全体で福祉の役割や価値を再認識し、次世代に伝えていくことが急務です。